耕作権の目的となっている農地の相続税評価方法
他人に貸している農地とは、耕作権の目的となっている農地のことをいいます。
そして、農地法に基づく賃貸借の場合には、耕作権割合分を相続税評価額から控除できます。
ただし、農地法に基づかない賃貸借の場合には、控除できません。
耕作権とは
農地の賃貸借で設定される主な権利として【農地法上の賃借権に基づく耕作権】というものがあります。
(また、似たようなものとして、「永小作権」というものもありますが、現状ではほとんど存在しないため、ここでの説明は割愛させて頂きます。)
賃借人(耕作人)が賃貸人(地主)に、賃貸借契約に基づいて地代を支払い、農地を耕作、又は採草放牧地で養畜します。
この農地を耕作、又は採草放牧地する権利を耕作権といいます。
そして、農地を賃貸借する場合には、農業委員会の許可が必要であり、いったん耕作権の設定がなされると、賃借人(耕作人)に権利保護が発生します。
耕作権による制約
農地の耕作権の解約を行う場合、原則、都道府県知事の許可が必要です。
もちろん、賃貸人(地主)は自由に土地を売買したりすることも出来ません。
また、賃貸人(地主)の都合で耕作権を解約する時には、賃貸人(地主)から賃借人(耕作人)へ、離作料の支払いが必要となります。
この離作料は、賃借人(耕作人)が耕作できなくなったことに対する「損失の補償」という位置づけですが、実際には料金が〇〇円と定められておらず、ほぼ地域の習慣で決まる、と言われています。
これらの事由から、通称【ヤミ耕作】と言われる、農業委員会を通さないで農地の貸し借りをすることの方が多い、と言われています。
農業委員会を通さないので、賃貸人(地主)から見れば法的な制約、賃借人(耕作人)から見れば法的な保護がありません。
ちなみに、農地台帳で「賃借権の設定の有無・耕作者の情報」を確認することが出来ます。
また、農地ナビでも「耕作権が発生しているかどうか?」を確認することが出来ます。
自用地の価額から耕作権の価額を控除する
賃貸人(地主)としては、耕作権の設定がある農地では、上述の通り、使い勝手が悪くなります。
よって、その分、相続税評価額が下がるように設計されています。
「耕作権の目的となっている農地の相続税評価方法」いわゆる【他人に貸している農地の相続税評価方法】は、以下のようになります。
農地としての自用地価額 × (1 - 耕作権割合)
そして、耕作権割合は以下のようになります。
農地の区分 | 耕作権割合 |
---|---|
純農地 | 100分の50 |
中間農地 | |
市街地周辺農地 | その農地が転用される場合に通常支払われるべき離作料の額、その農地の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して評価する。 ただ、離作料等の額が不明な場合には、各国税局が定める耕作権割合(30%~40%)により評価しても差し支えない。 |
市街地農地 |
ちなみに、ヤミ耕作の場合には評価減できず、農地としての自用地価額が、そのまま相続税評価額となります。
特殊な形態で農地を貸し付けている場合の控除額
以下は、特殊な賃貸での控除額となります。
賃貸形態 | 控除額 |
---|---|
市民農園として地方公共団体に貸し付けている農地 | 耕作権ではなく賃借権を控除 |
農業経営基盤強化促進法に基づき貸し付けている農地 | 耕作権ではなく5%の控除 |
農地中間管理機構に貸し付けている農地 | 耕作権ではなく5%の控除 |
10年以上の期間の定めのある農地の賃貸借 | 耕作権ではなく5%の控除 |
特別緑地保全地域内にあり、一定の要件を満たす管理協定が締結されている山林 | 自用地価額から20%控除 |
一定の要件を満たす市民緑地契約が締結されている土地 | 自用地価額から20%控除 |
一定の要件を満たす風景地保護協定が締結されている土地 | 自用地価額から20%控除 |
動画で解説
他人に貸している農地の相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。