未成年者や障害者の方が法定相続人なら各種控除可能
遺産の相続人が未成年者や障害者である場合、本人が負担する相続税に、未成年者控除や障害者控除を適用できます。
そして、未成年者控除と障害者控除には、共通の特徴があります。
今回は、そんな未成年者控除や障害者控除について、解説しています。
未成年者控除と障害者控除の共通の特徴
遺産を相続や遺贈により取得した人が、未成年者または障害者である場合にはそれぞれ、
- 未成年者控除
- 障害者控除
というものがあります。
控除できる金額は、未成年者控除・障害者控除それぞれ違いますが、共通の特徴もあります。
それは相続人(未成年者もしくは障害者)が納める相続税額が、控除額(未成年者控除額もしくは障害者控除額)より少ない場合には、その余った控除額(控除額-相続税額)を、その人の扶養義務者の相続税から控除できます。
扶養義務者とは、
- 配偶者
- 直系血族
- 兄弟姉妹
- 3親等内の親族のうち一定の者
を指します。
ただし、上述の控除しきれなかった控除額を、扶養義務者の相続税から控除するには、以下の条件があります。
- 相続税の申告
- 未成年者もしくは障害者に相続税が発生している
- 相続した未成年者もしくは障害者が、被相続人(故人)の法定相続人である
ということが必要です。
未成年者控除・障害者控除を適用したら相続税が0円になった。
よって、相続税の申告をしなかった。
未成年者控除・障害者控除の適用には、相続税の申告が要件です。
なので、相続税が0円でも相続税の申告が必要です。
そして、配偶者の連れ子などは、法定相続人ではないので、仮に遺贈で財産を相続していても、未成年者控除・障害者控除は適用できません。
仮に配偶者の連れ子(未成年者もしくは障害者である)が未成年者控除や障害者控除の適用を受けるためには、養子縁組で法定相続人になる必要があります。
また、法定相続人の中に未成年者や障害者がいるだけで、その人が相続していない場合は、未成年者控除や障害者控除は適用できません。
なので、未成年者もしくは障害者が受けるべき控除を、扶養義務者から全額移控除するといったことは出来ません。
ただし、1円でも未成年者もしくは障害者に相続税が発生すれば、未成年者控除や障害者控除を使えます。
相続税の金額の多寡は関係ありません。
未成年者控除
この未成年ですが、「相続が発生した日(被相続人が亡くなった日)に20歳未満」の方を指します。
なので、相続が発生日の前日に20歳の誕生日を迎えた。
残念ながらこの場合は、未成年者控除は適用できません。
また、これ以外に相続人(未成年者)が以下の条件を満たさないと、未成年者控除の適用は出来ません。
- 法定相続人である
- 相続や遺贈で財産を取得した時に、日本に住所がある
- 2を満たさない場合、日本国籍があり、相続開始前10年以内に日本に住所があった
簡単に言うと、上記のような条件です。
正確には「未成年者控除が受けられる人」は、次のすべてに当てはまる人となります。
~以下、国税庁HP(未成年者の税額控除)より引用~
(1)相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人
(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)又は、相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人
イ 日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人
ロ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます)
ハ 日本国籍を有していない人(被相続人が、一時居住被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合を除きます)
(注)「一時居住者」、「外国人被相続人」、「非居住被相続人」及び「非居住外国人」については、相続人が外国に居住しているときをご覧下さい。
(2)相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である人
(3)相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること
未成年者控除の相続税の減額金額
「(満20歳-現在の年齢)×10万円」が控除できる金額となります。
1年未満は切り捨てとなります。例えば18歳9カ月の場合は18歳で計算します。
なので、18歳9カ月の方の未成年者控除額は(20-18)×10万円=20万円となります。
障害者控除
相続税で障害者控除を受けられる障害者というのは、85歳未満である必要があります。
また、相続開始時(被相続人の死亡時)に障害者である必要があります。
また、これ以外に相続人(障害者)が以下の条件を満たさないと、障害者控除の適用は出来ません。
- 法定相続人である
- 相続や遺贈で財産を取得した時に、日本に住所がある
簡単に言うと、上記のような条件です。
正確には「障害者控除が受けられる人」は、次のすべてに当てはまる人となります。
~以下、国税庁HP(障害者の税額控除)より引用~
(1)相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人
(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます)(注)「一時居住者」、「外国人被相続人」及び「非居住被相続人」については、相続人が外国に居住しているときをご覧下さい
(2)相続や遺贈で財産を取得した時に障害者である人
(3)相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること
障害者控除の相続税の減額金額
「(満85歳-現在の年齢)×10万円(*)」が控除できる金額となります。
未成年者控除の時と同様に、1年未満は切り捨てとなります。
例えば80歳3カ月の方の場合の障害者控除の金額は、(85-80)×10万円(*)=50万円となります。
(*)特別障害者に該当する場合は20万円となります。
動画で解説
相続税の未成年者控除と障害者控除について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
遺産の相続人が、未成年者や障害者である場合、その相続税は、通常の方法で計算したときよりも安くなります。
それは、遺産の相続人が、未成年者や障害者である場合、本人が負担する相続税から、控除できる金額があるからです。
控除できる金額は、未成年者の場合、20歳になるまでの年数に10万円をかけた金額になります。
たとえば、15歳の未成年者であれば、50万円分の相続税が減額されます。
障害者の場合は、85歳になるまでの年数に対して、10万円か障害の程度によって、20万円をかけた金額となります。
ただし、いずれもその未成年者や障害者の方が、法定相続人でなければ適用されません。
たとえば、法定相続人でない未成年者の孫が、遺言などによって財産を取得しても、未成年者控除は適用されないので、注意が必要です。
未成年者控除や障害者控除は、本人が負担する相続税を減額する制度ですが、中には、未成年者控除や障害者控除を適用すると、税金の額よりも控除できる額の方が、大きくなる場合があります。
たとえば、15歳の未成年者の方は、50万円分の相続税が減額されますが、もともと負担する相続税が30万円しかなかった場合、20万円分の控除(額)が余ってしまいます。
この余った控除額は、その人の扶養義務者の相続税から、控除することができます。
これは知らないと損をする可能性がありますので、ぜひ覚えておいてください。
扶養義務者とは、扶養の対象となる人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹、3親等内の親族のうち、一定の方が該当します。
ただし、このルールは未成年者や障害者本人の余った控除額を扶養義務者にまわす、という趣旨のものですので、未成年者や障害者の方が、そもそも財産を相続していない場合は使えません。
本人の相続税額が0円のときは、そもそも未成年者控除や、障害者控除が計算されないからです。
したがって、控除額の余りも発生しません。
また、未成年者や障害者の方の相続税が、まだ0円になっていないのに、扶養義務者の方から、先に控除するということもできないので、注意をしてください。
なお、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げとなりますが、これにともなって、相続税の未成年者控除も18歳に引き下げとなります。