【共有・放棄・思い】が空き家を発生させる
相続で空き家が発生する原因は、主に以下の3つです。
- 相続人の思い
- 共有名義での相続
- 相続人全員での相続放棄
今回は、相続で空き家が発生する原因や、空き家の問題について、解説しています。
相続人の思い
今は住んでいないが、被相続人(亡くなった方)、相続人の思い出が詰まっている実家。
永年暮らしてきた実家への愛着を、簡単には捨てられない。
人によっては、実家の処分はおろか、(愛着によって)家財道具の処分も出来ないケースもあります。
このように、相続人の思いで実家を処分(売却や解体など)出来ない、ということは珍しくありません。
では、実家を賃貸に回せば?と思われるかもしれませんが、そもそも相続人が誰も住みたがらない実家。
そう簡単に、借り手は見つかりません。
そして、売却を決意したとしても、空き家問題が叫ばれている昨今。
買い手も簡単には見つかりません。
愛着があるから・思い出があるから、とりあえず空き家を相続した。
しかし、現実には誰も住まず、賃貸も売却も出来ない。
結果、空き家となっていきます。
共有名義での相続
実家を相続人の共有財産として、相続した。
これも空き家の発生原因の一つ、になりやすい事項です。
それは、共有名義の不動産の売却等には、共有者全員の合意が必要となるからです。
(共有財産の問題点については、共有財産は相続トラブルの元に記載しています。)
相続した時には問題がなかった。
けれど、月日が経つにつれて
- 共有者の仲が悪くなった
- 共有者が認知症になった
- 共有者が行方不明になった
これらの場合、共有者全員の合意が得られず、共有名義の不動産が凍結状態(売却・賃貸・改修などが出来ない状態)になり、空き家となっていきます。
相続人全員での相続放棄
実家を相続しても空き家になる。
他に相続したい遺産も特にない。
であるならば、相続放棄をしたい。
ただし、相続放棄する際には、注意が必要です。
詳しくは借金等の負の遺産を消すには親族全員で相続放棄するに記載していますが、相続放棄をすると、本来、相続人でなかった人が相続人になる場合があります。
なので、空き家の相続を防ぐには、相続人全員での相続放棄が必要となります。
ただし、相続放棄は【空き家の相続を防ぐ】には有効ですが、空き家そのものは発生することになります。
誰も相続していない不動産は、裁判所によって選任された相続財産管理人が管理することになります。
そして、相続財産管理人が、その不動産を処分するには、手続きなどで時間がかかります。
ある意味、相続人全員で相続放棄をすると、しばらくの間は100%空き家が発生する、ということになります。
空き家は家族だけの問題ではない
実家が空き家になった。
これは家族にとって大問題です。
- 誰か住むのか?
- 固定資産税は誰が払うのか?
- 解体するのか?する場合は、誰が費用を負担するのか?
悩ましい問題です。
しかし、空き家は家族だけの問題ではありません。
上記の問題以外にも、以下のような様々な問題があります。
- 景観の悪化
- 火災の発生
- 倒壊の危険
- 害虫や害獣の発生
このように、空き家は家族だけの問題ではなく、近隣住民にも迷惑をかける問題です。
また、空き家の多い地域は、治安の悪化にもつながります。
こんな問題だらけの空き家。
なぜ発生してしまうのか?
それは、原因の一つとして、親が認知症になってしまうことが挙げられます。
(詳しくは認知症で介護施設に入所しても実家の売却が出来ない?に記載)
また、もう一つの大きな原因は、上述したように相続です。
空き家は、相続人はもちろん、地域社会への問題にもなってきます。
あなたの空き家のせいで迷惑している。
こんなことを言われないためにも、事前に対策を考えていきましょう。
そして、空き家対策として、有効なのは家族信託です。
(詳しくは家族信託は相続税対策の最前線に記載)
今すぐ空き家の相続対策を始めましょう。
動画で解説
相続で空き家が発生する原因について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
相続で空き家が発生する原因は、主に、相続人の思い、共有名義での相続、相続人全員による相続放棄といったことが考えられます。
まず、相続人の思いに原因があるケースから解説します。
これは相続人が思い出や愛着から実家を手放すことができず、とりあえず相続してしまって、空き家になるパターンです。
もちろん、その家で暮らす計画があるのなら問題のないことですが、今もこれからも住む予定のない家を安易に相続すると、間違いなく空き家になります。
実家を取り壊すことに抵抗があるだけなら、賃貸するという手もあります。
しかし、そもそも相続人が誰も住みたがらない家ですから、簡単に借り手は見つかりません。
仕方なく売却を決意したとしても、そう簡単に買い手も見つからないでしょう。
相続人の思いから、とりあえず相続はしたものの、賃貸も売却もできず、結果として空き家になるというパターンです。
管理の手間や固定資産税などは発生し続けるため、金銭的にもマイナスが多いです。
続いて、共有名義での相続も、空き家の原因になりやすいです。
遺産分割でもめたくないので、とりあえず財産を相続人の共有名義にしてしまう、ということがあります。
ところが、不動産を複数人の共有にすると、後から売却や賃貸をしようとしたとき、全員の合意が必要になります。
もし、年月が経って共有者の関係が悪くなったり、誰かが認知症になったり、所在がわからなくなったりすると、全員の合意が得られません。
結果、その不動産は売却も賃貸もできない状態になり、空き家として放置されてしまいます。
最後は、相続人全員による相続放棄です。
家を相続しても誰も住まないし、他に相続したい財産も特にない、というような時は、全員で相続放棄をする場合があります。
そして誰も相続しなかった財産は、裁判所によって選任された相続財産管理人が処分します。
しかし、これには手続きに時間がかかります。
よって、処分までの間、空き家が発生することとなります。
ここまでが相続によって、空き家が発生する主な原因です。
これに加えて、相続以外の理由で空き家が発生することがあります。
それが実家に住んでいる親が認知症になってしまうケースです。
親が認知症になって契約できない状態になると、実家を売却したり賃貸することができなくなってしまいます。
結果的に親が施設に入所した後などは、空き家状態になってしまいます。
空き家は家族だけの問題ではありません。
放置すれば、町の景観や治安が悪化したり、火災が発生したり、倒壊や害虫などが発生したりと、近隣に迷惑をかける可能性があります。
このようなことにならないよう、空き家対策はしっかり考えていかなければなりません。
親の認知症対策には、家族信託という方法が有効です。
親が認知症になってしまう前に、今すぐ空き家の相続対策を始めましょう。